○障がいを理由とする差別の解消の推進に関する豊後大野市職員対応要領
平成31年3月28日
告示第68号
(趣旨)
第1条 この告示は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、豊後大野市職員(非常勤職員及び臨時職員を含む。以下「職員」という。)が、適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。
(1) 障がい 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)及びその他の心身の機能の障がいをいう。
(2) 障がい者 障がいのある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(3) 監督者 職員のうち豊後大野市行政組織規則(平成24年豊後大野市規則第15号)に規定する係長以上の者をいう。
(4) 社会的障壁 障がいのある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(不当な差別的取扱いの禁止)
第3条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、事務又は事業を行うに当たり、障がいを理由として、障がい者を正当な理由なく不利に扱うこと(以下「不当な差別的取扱い」という。)により、障がい者の権利利益を侵害してはならない。この場合において、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。
(合理的配慮の提供)
第4条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、事務又は事業を行うに当たり、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。この場合において、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。
(監督者の責務)
第5条 職員のうち監督者は、障がいを理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。
(1) 日常の執務を通じた指導により、監督する職員に対して、障がいを理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。
(2) 障がい者、その家族及びその他の関係者(以下「障がい者等」という。)から、不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供に関する相談又は苦情等の申し出(以下「相談等」という。)があった場合は、迅速に状況を確認すること。
(3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。
2 監督者は、障がいを理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。
(相談体制)
第6条 職員による障がいを理由とする不当な差別的取扱いを受けたとして、障がい者等から相談等があった場合の対応は、その内容に応じて当該事務事業を所管する課等(以下「所管課等」という。)の職員が行うものとする。ただし、所管課等だけでは対応が困難な事案は、当該障がい者等の了承の下、社会福祉課及び所管課等で検討・協議しながら行うものとする。
2 障がい者等が所管課等に相談等を行うことをためらう場合や拒否する場合は、当該障がい者等の了承の下、社会福祉課が相談等に当たるものとする。また、相談等に対する対応については、相談等の内容に応じて、社会福祉課又は社会福祉課及び所管課等が行うものとする。
3 相談等を受ける場合は、性別、年齢、心身の状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファックス、電子メールに加え、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。
4 所管課等に寄せられた相談等は、社会福祉課に集約し、相談者等のプライバシーに配慮しつつ、関係者間で情報共有を図り、以降の相談等において活用することとする。
(研修・啓発)
第7条 市は、障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修及び啓発を行う。
2 市は、新たに職員となった者が、障がいを理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解し、新たに監督者となった職員が、障がいを理由とする差別の解消等に関し求められる役割を的確に果たせるよう、必要な研修を行う。
3 市は、職員に対して、障がいの特性を理解させるとともに、障がい者に対して適切に対応するための意識啓発を図る。
附則
この告示は、平成31年4月1日から施行する。
(別紙)
第1章 不当な差別的取扱いの禁止
1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方
法は、障がい者に対して、正当な理由(※1)なく、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否し、提供に当たって場所・時間帯などを制限し、又は障がい者でない者に対しては付さない条件を付すことなどの障がい者の権利利益の侵害を禁止している。
ただし、障がい者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な次の特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。
(不当な差別的取扱いに当たらない特別の措置)
○ 障がい者を障がい者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)
○ 法に規定された障がい者に対する合理的配慮の提供による障がい者でない者との異なる取扱い
○ 合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状態等を確認すること
このように、不当な差別的取扱いとは、事務又は事業において、正当な理由なく、障がい者を本質的な諸事情が同じ障がい者でない者より不利に扱うことである。
※1 正当な理由の判断
正当な理由に相当するのは、障がい者に対して、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。
この場合において、職員は、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障がい者及び第三者の権利利益(安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)並びに事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点を考慮し、具体的場面や状況に応じて、総合的・客観的に判断することが必要である。
職員は、正当な理由があると判断した場合には、障がい者にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとする。
2 不当な差別的取扱いの具体例
不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は、以下のようなものが考えられる。なお、前項で示した正当な理由の判断と同様に、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。
以下に記載されている具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること、さらに、これらはあくまでも例示であって、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。
(不当な差別的取扱いに当たり得る具体例)
○ 障がいを理由に窓口対応を拒否する。
○ 障がいを理由に対応の順序を後回しにする。
○ 障がいを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレット等の提供等を拒む。
○ 障がいを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。
○ 事務又は事業の遂行上、特に必要でないにもかかわらず、障がいを理由に、来庁や説明会等の際に、付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。
第2章 合理的配慮
3 合理的配慮の基本的な考え方
(1) 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担(※2)を課さないもの」と定義されている。
法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(※3)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障がい者が受ける制限は、障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものであるといういわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、障がい者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。
合理的配慮は、市の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。
(2) 合理的配慮は、障がいの特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障がい者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。
合理的配慮の提供に当たっては、障がい者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。なお、合理的配慮を必要とする障がい者が多数見込まれる場合、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。
(3) 合理的配慮は、障がい者の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障がい者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置であり、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障がいの状態が変化することもあるため、特に、障がい者との関係性が長期にわたる場合には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。
(4) 市がその事務又は事業の全部又は一部を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障がい者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めるものとする。
※2 過重な負担
過重な負担については、具体的な検討をせずに拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障がい者にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとする。
○ 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か)
○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
○ 費用・負担の程度
※3 意思の表明
意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。
また、障がい者からの意思表明のみでなく、知的障がいや精神障がい(発達障がいを含む。)により本人の意思表明が困難な場合には、障がい者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。
なお、意思の表明が困難な障がい者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明ができない場合であっても、当該障がい者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障がい者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めるものとする。
4 合理的配慮の具体例
合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものが考えられる。
なお、記載した具体例については過重な負担が存在しない事を前提としており、また、これらはあくまでも例示であって記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。
(合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例)
○ 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げの補助をする、携帯スロープを渡すなどする。
○ 配架棚の高い所に置かれたパンフレットを取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。
○ 目的の場所までの案内の際に、障がい者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障がい者の希望を聞いたりする。
○ 障がいの特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。
○ 疲労を感じやすい障がい者から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障がい者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。
○ 不随意運動等により書類を押さえることが難しい障がい者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。
○ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障がい者に対し、手書きのボードを用いて、わかりやすく案内し誘導を図る。
(合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例)
○ 窓口付近で戸惑っている様子の障がい者に対し、積極的な声かけを行う。
○ 筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字などのコミュニケーション手段を用いる。
○ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、それぞれの媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。
○ 視覚障がいのある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。
○ 意思疎通が不得意な障がい者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。
○ 駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。
○ 書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読といった配慮を行う。
○ 比喩表現が苦手な障がい者に対し、比喩や二重否定表現などを用いずに説明する。
○ 障がい者から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら対応する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。
○ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障がいのある委員や知的障がいのある委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。
○ 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障がいの特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。
(ルール・慣行の柔軟な変更の具体例)
○ 順番を待つことが苦手な障がい者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。
○ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障がい者の順番が来るまで別室や席を用意する。
○ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。
○ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所に変更する。
○ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当該障がい者に説明の上、障がいの特性や施設の状況に応じて別室を準備する。